1984年、イタリア空軍の曲技飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」のために誕生したクロノマットは、ブライトリングを代表するアイコンとして進化を続けてきた 。その中でもRef.AB011012/BF76/296Sは、2017年に追加された異色の一本であり、44mmのステンレススチールケースにカーボンファイバーダイアルという、前衛的な組み合わせが魅力である 。
この時計の第一印象を決定づけるのは、漆黒のカーボン・コンポジット文字盤である。光の加減で浮かび上がる複雑な杢目模様は、一本一本が微妙に異なる唯一無二の表情を見せる。特筆すべきは、通常のクロノマットが円形のサブダイアルを採用するのに対し、このモデルにはスクエア型の3つのサブダイアルが配されていることだ 。3時位置の30分積算計、6時位置の12時間積算計、9時位置のスモールセコンドが織りなす幾何学的なコントラストは、視覚的な深みと独創性を生み出している。4時と5時の間には実用的な日付表示窓が控えめに配置され、機能性を損なわない。
ケースはサテン仕上げとポリッシュ仕上げを巧みに使い分けたステンレススチール製で、厚さは約16.95mm 。特徴的なライダータブ付きの逆回転防止ベゼルは、クロノマットのアイデンティティであり、視認性と操作性を極限まで高めている。両面無反射コーティングを施したカーブドサファイアクリスタルが、あらゆる角度からの視認性を確保する。
心臓部に搭載されるのは、ブライトリング自社製のキャリバーB01である。垂直クラッチとコラムホイールを備えたこのクロノグラフムーブメントは、28,800振動/時、約70時間のパワーリザーブを誇り、COSC公認クロノメーターの高精度を実現している 。500mという圧倒的な防水性能は、プロフェッショナルツールとしての実力を裏付けている。
グレイとブラックのクロコダイルラバーストラップは、ケースの精悍さと見事に調和し、スポーティーな印象をさらに強調する 。プッシュボタン式フォールディングバックルで確実に固定される。
AB011012/BF76/296Sは、単なる時計ではない。それは、カーボンが織りなす漆黒の迷宮に、ブライトリングの精密技術が融合した、異端の美学を体現する一本なのである。 |