1976年、ジェラルド・ジェンタの筆によって生み出されたノーチラスは、高級スチールスポーツウォッチという新たなジャンルを切り開いた。それから45年、2021年、パテック フィリップは歴史的な決断を下す。長年にわたりコレクター垂涎の的であった5711の生産終了を発表し、その最後を飾る「白鳥の歌」として送り出したのが、Ref.5711/1A-014である。オリーブグリーンの文字盤を纏ったこの一本は、伝説の終幕にふさわしい、静かながらも灼熱の輝きを放つ。
40mmのステンレススチールケースは、厚さわずか8.3mmという驚異的な薄さを誇り、腕元に吸い付くように収まる。舷窓からインスピレーションを得たケースサイドの造形と、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを巧みに使い分けた表面処理は、光を受けるたびに複雑な陰影を描き出す。そして、このモデルの最大の特徴であるサンバースト仕上げのオリーブグリーンダイアルは、光の加減によってグレーから深い緑、時には漆黒にまで表情を変える神秘的な美しさを湛える。水平方向のエンボス模様が奥行きを加え、ホワイトゴールド製のアプライドインデックスと枠取りされた日付窓が、上品なアクセントを添える。
心臓部に搭載されるのは、2019年に導入された自社製キャリバー26-330 S Cである。324 S Cをベースに改良されたこのムーブメントは、停秒機能を備え、28,800振動/時、45時間のパワーリザーブを誇る。シースルーバックからは、21Kゴールド製ローターに刻まれたカラトラバ十字と、コート・ド・ジュネーブやペルラージュなどの精緻な装飾を鑑賞することができる。パテック フィリップ・シールドが保証する精度は、驚異の−3/+2秒/日である。
120mの防水性能を備え、統合型ステンレススチールブレスレットは、宝飾品のような着け心地と洗練された美しさを両立している。ダブルフォールディングクラスプには、カラトラバ十字が刻印される。
5711/1A-014は、わずか1年間だけ生産された特別な一本である。元の小売価格は約34,890ドルであったが、今やその数倍の価値で取引される伝説的な存在となった。それは、単なる時計ではない。ジェラルド・ジェンタの遺伝子を受け継ぎ、パテック フィリップの歴史に新たな1ページを刻んだ、二度と手に入らない光芒なのである。 |