イタリア海軍のために時計を供給してきたパネライの歴史において、「ラジオミール」はその原点を語る上で欠かせないモデルです。参照番号PAM00690は、1936年に誕生した伝説的な初代ラジオミールのデザインを忠実に継承し、現代の技術で蘇らせた、まさに「生きた歴史」と呼ぶに相応しい一本です。
そのデザインは、パネライの現在の象徴である力強いケースガードをあえて排した、シンプルかつ洗練されたもの。47mmのステンレススティール製ポリッシュ仕上げケースは、当時のプロトタイプをほぼそのまま再現しています。最大の特徴は、ワイヤーリベットで固定されたレザーストラップと、スクリュー式リューズを採用していないスムーズなケース側面。これにより、歴史的モデル特有のしなやかでヴィンテージ感あふれる佇まいを実現しています。
文字盤は、深みのあるブラックと、コントラストの高いクリーム色のインデックスを採用。これは「サンドイッチ」構造ではなく、初期モデルに倣った「塗り潰し」方式であり、より深い味わいを感じさせます。もちろん、暗所での視認性を高めるために開発された「ラジオミール」発光材が塗布されており、その歴史的な意義を現代に伝えています。
その心臓部は、 パネライコピー自制の手巻きムーブメント「カルiber OP XXXI」。これは現代の高精度な技術で作られていますが、当時のシンプルな機械式時計の感触を味わうことができます。手でリューズを巻き、時計と対話するという原始的な喜びは、デジタル化された現代において、より一層貴重な体験となるでしょう。
パネライ ラジオミール PAM00690は、単なる時計を超えた、時計史の重要な一幕を体感できるタイムマシン。所有する者は、パネライの原点に触れ、その長い歴史の重みを腕に刻むことになるのです。 |