フィレンツェ発、1860年の創業以来、パネライコピーはイタリア海軍の特殊潜水部隊「デチマ・マス」のために極限の道具を生み出してきた。その軍団用時計としての機能美は、今日「ラジオミール」の名に受け継がれている。Ref.PAM439は、その伝統に「18Kレッドゴールド(オーロッソ)」という贅沢な素材を纏わせ、新たな光を当てた特別な一本である。
ケース径は42mm。1940年代のオリジナルモデルを想起させるクッション型のフォルムは、レッドゴールドの重厚な輝きを得て、軍用道具としての無骨さと貴金属の温かみが絶妙に調和する。サファイアクリスタルの風防とシースルーバックが、内部の精巧な動きを覗かせる。
文字盤は深みのあるブラウン。いわゆる「タバコダイアル」と呼ばれるこの色調は、レッドゴールドのケースと見事に呼応し、ヴィンテージ感と現代的なエレガンスを同時に演出する。アラビア数字と棒状インデックスが配されたその表情は、シンプルでありながら、一切の無駄を排した軍用時計の美学を色濃く残している。夜光塗料を施した針とインデックスは、暗所でも確かな視認性を提供する。これは、暗闇の海中でも任務を遂行したオリジナルへの敬意に他ならない。
この時計の心臓部は、パネライ自社製の手巻きキャリバーP.999である。厚さわずか3.4mmという超薄型ムーブメントでありながら、60時間という十分なパワーリザーブを確保。毎朝リューズを巻き上げる行為そのものが、時計との静かな対話の時間となる。9時位置のスモールセコンドが刻むリズムは、機械式時計の鼓動そのものだ。
クロコダイルレザーのストラップと、レッドゴールド製のピンバックルが、全体の佇まいをさらに格調高くまとめる。防水性能は10気圧(100m)。軍用時計の系譜にふさわしい実用性も忘れていない。
PAM439は、パネライの持つ二面性を体現するモデルである。闇に潜るための道具でありながら、光の中で輝く宝飾品でもある。それは、過酷なミッションを終えた潜水兵が、夜のパーティー会場で見せる優しい微笑みのような、相反する魅力を内包している。軍団の遺伝子は、ローズゴールドの鎧を纏っても決して失われない。むしろ、より深みを増して、時を超えて輝き続けるのだ。 |