スイス・ジュネーブ郊外の「ウォッチランド」。フランク・ミュラーのマニュファクチュールは、伝統的な時計製造の技法と、奔放なクリエイティビティを融合させる場所として知られている。「ヴァンガード グラビティ ヨッティング トゥールビヨン」は、その中でも特に海へのオマージュを捧げた、機械芸術の傑作である。
この時計の第一印象を決定づけるのは、44mm x 53.70mmという圧倒的なトノー型(樽型)ケースである。厚さ15.1mmのボディは、ローズゴールドまたはホワイトゴールドの重厚な輝きを放ち、ラグからケースへと流れるような曲線を描く。しかし、この大きさは決して威圧のためではない。それは、直径21.2mmという前代未聞の「巨大トゥールビヨン」を完璧に収めるための、必然としての造形なのである。
文字盤の大部分を占めるこのトゥールビヨンケージは、ヨッティングモデルのために特別にデザインされた「ウインドローズ(羅針盤)」の形状をしている。通常のトゥールビヨンなら隠れてしまうテンプまでもが直径14mmという大きさで露わになり、まるで船のプロペラのように規則正しく回転する。X字型のブリッジはドーム状に構成され、三次元的な奥行きと未来感を創り出す。
深いブルーのダイアルには、分目盛りが羅針盤の方角(N、E、S、W)とその度数に置き換えられ、海原を渡るための機能美を主張する。アプライドのアラビア数字と針は、このブルーの海に浮かぶように配置されている。
心臓部に搭載される自社製手巻きキャリバーFM CS-03は、5日間(120時間)という驚異的なパワーリザーブを誇る。187の部品から構成されるその精密な動きは、スケルトン加工された文字盤からも、シースルーバックからも堪能できる。防水性能は30m。
ストラップは、ブルーのアリゲーターやテキスタイルが用意され、ケースのゴールドと見事に調和する。それは、時を計る道具である前に、羅針盤を腕に刻み、風と海を繋ぐための、機械仕掛けのヨットなのである。 |