時計が刻む「1秒」を、あなたはどれだけ細かく分割できるだろうか。タグ・ホイヤーがその名に「マイクロタイマー」と冠したこの時計は、その問いに驚愕の答えを提示する。それは、文字通り「1/1000秒」という、ほぼ人間の感知限界を超えた領域まで、時間を計測するための機械なのである。
その特異な使命は、ダイヤルデザインに如実に表れている。時を刻む「時計」ではなく、時間を「計る」機械装置としての純粋な機能美。中央の巨大な計測針は、1秒で文字盤を一周する。その驚異的なスピードは、まさに1/1000秒の世界への入り口だ。複数のサブダイヤルが、分、1/100秒、1/1000秒という異なる単位の計測結果を同時に表示するその姿は、高度な実験室の計器のようである。
この超高速計測を可能にしているのは、タグ・ホイヤーが独自開発した手巻き式ムーブメント「キャリバーTHT-81」である。従来のクロノグラフ機構(毎時約28,800振動)をはるかに超える、毎時**3,600,000振動**という超高速で作動する。この桁外れの高振動数が、目にも留まらぬ一瞬を捉え、数値化することを可能にした。
そのケースは、ブラックDLCコーティングを施したチタニウム製。軽量かつ頑健なこの素材が、過酷なレーシングシーンでの使用を想定した、この時計の実用性を裏付ける。
タグ・ホイヤー マイクロタイマーは、日常の道具ではない。それは、速度に魅了され、極限の精度を追求する者たちへの、技術による挑戦状なのである。この時計が計るのは、単なる時間ではなく、人類の挑戦そのものなのだ。 |